専門家が言えない秘密!オンラインカジノ検挙者数が急増した本当の理由

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オンライン上で運営される オンラインカジノ(インターネット賭博)は、日本国内から利用すれば違法行為(賭博罪)に当たります​。近年、このオンラインカジノ利用者の摘発が急増し、社会問題としてクローズアップされています。

本記事では オンラインカジノ関連の検挙者数の推移を年ごとにまとめ、さらにコロナ禍におけるパチンコ業界の売上減少との関係について考察します。

 

オンラインカジノ検挙数の推移

まず、オンラインカジノに関わる一般人の検挙者数(逮捕者数)の推移を見てみましょう。2010年代半ばにはオンラインカジノ利用者が警察に検挙される事例はほとんどなく、 2015〜2018年頃までは摘発件数・人数ともにゼロに近い状態でした。

オンラインカジノ自体は当時から存在していたものの、警察の取締り対象として表面化するケースはごくわずかだったと考えられます。実際に一般の利用者が初めて摘発されたのは2016年前後と言われていますが、その件数もごく少数にとどまります。

 

しかし 2019年以降、徐々にオンラインカジノ摘発が増加し始め、2020年代に入るとその人数は急激に増えました。特に 2022年以降は警察庁が取締りを本格化させ、検挙者数は年々飛躍的に伸びています​。

以下の表は2015年から2024年までのオンラインカジノ関連の検挙者数をまとめたものです。

 

オンラインカジノ関連の検挙者数(全国・暦年ベース)

検挙者数(全国) 備考
2015年 0人 摘発事例なし
2016年 0人
2017年 0人
2018年 0人
2019年 推定 数人程度 公表データなし
2020年 推定 数人程度
2021年 推定 十数人程度
2022年 59人 警察庁公式発表(npa.go.jp)
2023年 107人 同上
2024年 279人 同上(過去最多)

※2019年以前の数値は公的統計がなく推定。2022年以降は警察庁公表データを参照しました。

 

ご覧のとおり、2022年には全国で59人がオンラインカジノ関連で検挙されました​。さらに 2023年は107人と倍近くに増加し​、2024年には279人と過去最多を記録しています​。

2024年の検挙者数279人は、それまで最多だった2023年から 2.5倍以上にも上る急増ぶりです​。

 

このように、ここ数年でオンラインカジノ摘発が一気に本格化したことが分かります。 なお、2022年以前は摘発の対象も主に違法サイトの運営者や胴元側でした。しかし最近では 一般の利用者(賭けた客)にも摘発の手が及んでいる点が特徴的です。

実際、2024年に検挙された279人のうち227人は店舗を介さないオンライン上の賭博=つまり自宅などからサイトに接続して賭博をした利用者でした​。警察庁は公式サイト上でも「海外で合法運営されているオンラインカジノであっても、日本国内からアクセスして賭博を行えば犯罪になる」と注意喚起し、取締りを強化しています​。

こうした背景には、次に述べるコロナ禍以降のオンライン賭博利用増加があるとみられています。

 

 

コロナ禍とパチンコ業界の打撃

2020年からの新型コロナウイルス禍は、国内のパチンコ業界に大きな打撃を与えました。感染拡大防止のため緊急事態宣言下でパチンコホールが休業要請を受けたり、外出自粛により来店客が激減したりしたことで、業界の売上(市場規模)は急減しました。

実際、パチンコ・パチスロのホールにおける貸玉料総計は 2019年には約20兆円規模ありましたが、2020年には約14.6兆円まで落ち込んでいます​。以降2021年〜2022年も14.6兆円程度と低迷が続き、コロナ前に比べ大幅な減少が続きました​。

 

パチンコ・パチスロ市場規模の推移(2019〜2023年)

年度 市場規模(貸玉料総計)
2019年 約20兆円
2020年 約14.6兆円
2021年 約14.6兆円
2022年 約14.6兆円
2023年 約15.7兆円

 

このようにコロナ禍でパチンコ産業は売上が激減し、多くのホール経営者が苦境に立たされました。実際、ホール数も2019年から2020年にかけて約500店減少しており​、業界全体の規模縮小が明らかです。

売上低下の要因は主にコロナによる営業自粛・客離れですが、その間に家で楽しめるオンライン賭博へ人々が流れた可能性も指摘されます。 事実、外出が制限された時期にオンラインカジノの利用を始めたという利用者の証言もあります。

ある元利用者の男性Aさんは、「コロナ禍で海外にも行けず、世間体的にもパチンコすら行けない状況で、SNSの広告で知ったオンラインカジノにすぐ飛びついた」と語っています​。

もともとパチンコや公営競技が好きだった層が、営業休止中のホールに行けない代わりに24時間どこでも賭けられるオンラインカジノに手を出したケースは少なくないです​。

 

こうした流れの中で、パチンコ業界にとってオンラインカジノは競合となり得る存在になりました。売上が落ち込んでいた2020~2021年頃、業界内では「オンラインカジノに顧客を奪われている」との危機感も高まっていたとされています。実際、警察庁の調査によればオンラインカジノ利用経験者は推計約337万人にも上り、その約4割は「違法とは認識せず」に利用していたことが明らかになりました​。こうした無自覚なユーザーが急増した背景には、コロナ禍での手軽さや娯楽不足も影響していると考えられます。

以上のように、コロナ禍によるパチンコ離れとオンラインカジノ利用増加は表裏一体の現象でした。パチンコ業界の売上低下が深刻化したちょうどその時期にオンライン賭博が浸透し始めたことから、警察によるオンラインカジノ摘発の本格化(2022年以降)には、この 業界動向の変化が少なからず関連していると考えられます。

 

 

警視庁OBの動きの可能性と規制強化の背景

オンラインカジノへの締め付け強化(取締り強化)の裏には、パチンコ業界の危機感とそれを代弁する勢力の存在が指摘されています。特に噂されるのが、パチンコ業界と関係の深い 警察OB(警視庁OBを含む) の働きかけです。

日本のパチンコ産業は長年、所轄官庁である警察との繋がりが強いことで知られてきました。実際、警察庁OBや各都道府県警OBが業界団体や関連企業に天下りする例も多く、警察と業界の「癒着」が指摘されてきた歴史があります​

例えば、遊技機の検査を行う業界団体のトップに元警察庁長官が就任したり、大手パチンコ機メーカーの顧問に元警視総監(東京警視庁トップ)が迎えられたりといった事例があります​。また、都内のパチンコ業者団体には多数の警察官OBが在籍し、大手チェーンでは各店舗ごとに元警察官を1名雇用する方針を打ち出していたとの報道もあります​。

 

このように警察と業界は人的にも密接な関係にあるため、業界の不利益となる事案には水面下で調整や働きかけが行われる可能性は否定できません。 そこで囁かれているのが、「オンラインカジノはパチンコ業界にとって脅威だから、業界筋が警察OBを通じて規制強化を促したのではないか」という噂です。

つまり、自分たちの顧客を奪いかねない違法オンライン賭博を放置すれば業界がさらに不利益を被るため、強固な警察ネットワークを背景に摘発を後押ししたのではないか、という見方です。もちろんこれは裏付けのない憶測レベルの話ではありますが、先述のような警察OBと業界の関係性を踏まえると全く荒唐無稽とも言い切れません。

 

さらに、オンラインカジノ規制の背景にはパチンコ業界だけでなく政府の思惑もあるとされています。一例として、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業との絡みです。政府は大阪湾岸の夢洲で2029年開業を目指し日本初の合法カジノ施設を進めていますが、「IRと競合しうるオンラインカジノは事前に排除しておきたい」という考えがあるとも専門家は指摘しています​。

実際、大阪IR建設計画が具体化してきた 2023〜2024年にオンラインカジノ摘発が急増したタイミングは、この見方とも符号します。仮に違法なオンライン賭博が野放しになれば、将来のIRの集客や健全な運営に支障をきたす恐れがあります。政府・業界としても、巨額を投じる合法IRビジネスを成功させるために、違法サイトを今のうちに一掃したいという狙いがあるのかもしれません​。

 

以上のように、オンラインカジノへの締め付け強化の裏には様々な思惑が絡んでいる可能性があります。ただし現時点で警視庁OBらが積極的に働きかけたという公式な証拠はなく、あくまで噂や業界関係者の見方に留まります。この点を踏まえ、本記事でも慎重に記述しましたが、少なくとも警察と業界の特異な関係性や、オンラインカジノ台頭が既存業界・政策にとって好ましくない状況であったことは事実と言えるでしょう。

 

 

オンラインカジノ摘発強化の今後と展望

今後、オンラインカジノに関する摘発者数はどのように推移していくのでしょうか。過去のトレンドと現在の規制状況から予測すると、少なくとも短期的には高止まりかさらに増加する可能性があります。

2024年に過去最多を記録した摘発者数279人という数字は氷山の一角であり、警察庁の調査が示すように潜在的な利用者は数百万人規模に上ります​。違法と認識せず利用している人も依然多いことから​、警察当局は広報啓発と併せて摘発を継続的に強化していく方針です​。

 

事実、警察庁は2023年頃から公式サイトやSNS(旧Twitterの「警察庁保安課」アカウント)でオンラインカジノの違法性を周知するキャンペーンを展開し、全国の警察も一斉摘発に乗り出しています​。この態勢が維持されれば、2025年も前年並みかそれ以上の検挙者数に達する可能性は十分に考えられます。

一方で、摘発強化が周知され有名人の摘発事例なども報じられたことから​、抑止効果で利用者が減少し今後は逮捕者数が頭打ちになる展開もあり得ます。多くの人にとって「オンラインだから海外サイトだから大丈夫」という誤解が解ければ、違法賭博へのハードルは上がるでしょう。

実際、2024年にはプロ野球選手やお笑い芸人などもオンラインカジノ絡みで摘発を受け社会問題化しました​。こうした報道を見て「自分も捕まるのでは」と不安になり、利用をやめるユーザーも出始めています​。

 

警察としても、摘発そのものだけでなく違法賭博の怖さや刑事罰リスクを周知することで、利用者の抑止に繋げたい狙いがあります。 中長期的に見ると、違法オンラインカジノの取り巻く環境は今後さらに厳しくなると予想されます。

先述のように政府が推進するIR事業との兼ね合いや、パチンコ業界からの圧力、そして何より社会全体の健全化の流れから、警察による取締りは緩むどころか一段と強化されていくでしょう。場合によっては、金融機関と連携した入出金遮断やプロバイダによるアクセスブロックなど、新たな規制手段が導入される可能性もあります。

 

実際、海外ではオンライン賭博対策としてこうした措置が取られている例もありますが、日本でも議論が進むかもしれません。 2025年以降の摘発者数の予測としては、2024年の279人をピークに横ばい~緩やかな減少に転じるシナリオと、さらに上積みされ300人超えとなるシナリオの両方が考えられます。

鍵を握るのは利用者数そのものの推移ですが、警察庁の2024年調査では約196万人が現在もオンラインカジノを利用しているとの推計でした​。仮にこの母数が大きく減らない限り、摘発人数も大幅には減少しにくいでしょう。一方で、警察の取締りが功を奏し違法参加者が減っていけば、将来的には摘発件数も落ち着いていくはずです。

いずれにせよ、オンラインカジノは「犯罪」であるという認識が社会に浸透し、利用者が減少していくことが最も望ましい展開です。競馬など合法的に認められた娯楽との健全な棲み分けを図りつつ、ギャンブル依存症対策も含めた包括的な議論が求められています。

オンラインカジノの摘発件数の推移は、日本におけるギャンブル規制の今後を占う指標ともなります。引き続き動向を注視しつつ、違法な賭博行為には手を出さないよう注意喚起が必要でしょう。

 

 

参考文献・情報ソース:

オンラインカジノに関する警察庁ウェブサイト​npa.go.jp、警察庁委託調査報告書​ja.wikipedia.org、各種報道。また、パチンコ産業の統計データは『レジャー白書2021』『DK-SIS白書2023』の引用​を参照しました。

 

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