トーナメントとキャッシュゲームの違いとは?初心者が知っておきたい基本と戦略

ポーカー

ポーカーといえば、同じルールで遊んでいるように見えても「トーナメント」と「キャッシュゲーム」ではまったく違うゲームのように感じる場面が多いです。

この記事では、ポーカー初心者が知っておくべき両者の基本的な違いと、それに伴う戦略や考え方のポイントをわかりやすく紹介していきます。

 

ポーカーには2つの主な形式がある

まずは「キャッシュゲーム」と「トーナメント」、それぞれのルールや仕組みの違いから見ていきましょう。

キャッシュゲームは、持っているチップと現金が同じ価値を持っています。たとえば100ドル分のチップを買えば、100ドル分の価値があり、好きなタイミングで参加・退出できます。もし負けても、追加で買い足して再びプレイすることも可能です。

 

一方、トーナメントは決められた開始時刻があり、プレイヤーは同じ額を払って参加します。全員が同じスタックから始まり、チップをすべて失うと脱落します。そして最後まで生き残った上位プレイヤーにだけ賞金が分配されるという仕組みです。途中で抜けると棄権扱いになるため、ある程度の時間的拘束もあります。

 

また、キャッシュゲームではブラインド(強制ベット)が常に一定ですが、トーナメントでは時間の経過とともにブラインドが上がっていきます。これにより、同じスタック量でもゲームが進むにつれて相対的な価値が小さくなっていきます。

 

レーキ(手数料)も異なります。キャッシュゲームでは毎ポットごとに一定の割合が差し引かれるのに対し、トーナメントでは参加費に手数料が含まれていて、プレイ中に追加のレーキは発生しません。

 

 

チップの価値はどう違う? ICMという考え方

もうひとつ見落としがちなのが「チップの価値」です。

キャッシュゲームでは1チップ=1ドルのように、単純明快な価値計算が成り立ちます。スタックが倍になれば、現金の価値も倍になります。

 

しかしトーナメントでは話が変わってきます。同じ1000点のチップでも、それが持つ“価値”は状況によってまったく異なります。ここで出てくるのが「ICM」という概念です。

ICMでは、プレイヤーのチップ量や残り人数、賞金の配分をもとに、それぞれのチップが“どれくらいのお金の価値を持つか”を計算します。特に影響が大きいのが「バブル」と呼ばれる賞金圏直前の場面です。たとえ勝率60%の勝負でも、ICM的にはフォールドすべきと判断されることがあるほど、リスクを避けることが重要になります。

 

たとえばこんな場面を想像してみてください。残り31人、上位30人が賞金をもらえるトーナメント、いわゆる“バブル”の状況です。

あなたのスタックは下から28番目ぐらいです。そんなとき、ビッグスタックのプレイヤーがオールインを仕掛けてきました。自分の手札を見てみると勝率は約60%、キャッシュゲームなら迷わずコールしていい勝負です。

でも、ここがトーナメントの怖いところ。もしこの勝負に負ければ、あなたは31位でバスト=賞金ゼロになります。しかも、他にチップがほとんど残っていないショートスタックが2人いて、もうすぐ自然と飛んでいく可能性が高い。そんな状況だったとしたら?

このときICM的には、「60%の勝率でもリスクが高すぎる」と判断され、フォールドするほうが長期的な利益(EV)が高いです。勝率だけではなく、「今ここで負けることの重さ」を考えるのが、トーナメントの難しさであり、ICMの本質です。

 

このように、キャッシュゲームでは「EV(期待値)ベースで勝負」、トーナメントでは「ICMを考慮して生存重視」というアプローチが基本です。

 

 

戦略の違い:序盤〜終盤で変わる考え方

両者の違いはルールだけではありません。実際の戦い方や戦略にも大きな差が出てきます。

まず、スタックの深さが挙げられます。キャッシュゲームは常にディープスタック(100BB前後)が基本で、ポストフロップ以降のプレイ技術が重要になります。ゆっくりじっくりと相手の癖を読みながら、バリューを取っていく戦い方です。

 

一方トーナメントは、開始直後こそディープスタックですが、ブラインドが上昇していくことで、どんどんショートスタックになります。すると自然と「プッシュ or フォールド」のような単純な局面が増え、運の要素も強まります。

 

プリフロップでのハンドレンジにも違いがあります。キャッシュでは強いハンドを厳選して戦うのが基本ですが、トーナメントではアンティがあるため少し広いレンジでゲームに参加します。特にブラインドスチールが重要になるため、アーリーポジションから誰もレイズしていないとき、ボタンやスモールブラインドはオープンレンジがかなり広くなります。

アンティがあると、プリフロップ時点でポットが大きくなるため、少し弱めのハンドでも参加する価値が高くなります。つまり、キャッシュゲームよりもポットを獲得したときに得られるチップ量が増えるため、自然と参加レンジは広くなります。

 

また、ベットサイズも異なります。キャッシュゲームでは大きめにベットしていくことが多いですが、トーナメントではスタックに応じてサイズを調整する必要があります。終盤では「オールイン=最大の武器」として使われることもしばしばです。

 

キャッシュゲームとトーナメントでのオープンレンジの違い

実際に、どれくらいプリフロップの参加レンジに差が出るのか比べてみます。
たとえば、ボタン(BTN)でのオープンレンジを比べてみると、その違いは一目瞭然です。ポーカープリフロップトレーナープロでのハンドレンジ表を見ていきます。

 

キャッシュゲームのハンドレンジ表です。スタックは75BB

 

トーナメントのハンドレンジ表です。こちらはスタックが70BB

 

このように、同じポジションでもトーナメントでは、より広いレンジで積極的に参加する必要があるのがわかります。 アンティによってポットが大きくなるぶん、弱めのハンドでもリターンが見込めるうえ、キャッシュゲームではレーキ(手数料)の存在がレンジを狭める方向に働くためです。

 

 

バンクロール管理とリスクの捉え方

プレイヤーの資金(バンクロール)に対する考え方にも大きな違いがあります。

キャッシュゲームは比較的収支のブレが小さく、安定して結果を積み上げていきやすい形式です。仮に負けても、次のセッションで取り返せる機会が多く、精神的な負担も小さいです。おおよそ40〜50回分のバイインがあれば、安全にプレイできると言われています。

 

一方でトーナメントは、収支のブレが非常に大きくなります。いくら上手くプレイしても、1カ月間まったく賞金に届かないことも普通にあります。そのかわり、一撃で数十倍の賞金を獲得できる夢もあります。

そのためトーナメントに挑むには、100回以上のバイインに耐えられる資金力と、結果が出ない時期を乗り越えるメンタルの強さが欠かせません。

 

 

自分に合っているのはどっち?

では、あなたに向いているのはキャッシュゲームでしょうか? それともトーナメント?

まず、時間の自由度を重視するならキャッシュゲームがおすすめです。好きな時間に参加して、好きなタイミングで抜けられるので、日常生活に無理なく組み込みやすいというメリットがあります。

 

逆に、まとまった時間をとって一つの勝負に集中したい人、大きな賞金を狙いたい人にはトーナメントが合っているかもしれません。勝負の緊張感や、終盤の駆け引きに魅力を感じるなら、ぜひ一度トライしてみる価値はあります。

 

また、収支の安定を求めるならキャッシュ、スリルと夢を追いたいならトーナメント、という選び方もできます。

どちらの形式にも、それぞれの魅力と戦い方があります。まずは自分のプレイスタイルや性格に合うほうからスタートしてみて、少しずつ両方に挑戦していくのも一つの方法です。

ポーカーは奥が深いゲームです。形式ごとの特徴を知ることが、上達への第一歩になります。

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